第39回 パサージュ琴海アイランドゴルフクラブ
新しいビッグネーム
今や、パサージュ琴海アイランドゴルフクラブという名前の、美しくもスペクタクルなゴルフ場を知らない人はいなくなった、と言ってもよさそうだ。東北の新しい人気コースボナリ高原ゴルフクラブと並んで、日本のゴルフ場ベスト50、いやベスト30の地位をおびやかし始めた新しいビッグネームである。
それにしても、ゴルフクラブとしては異例の名称である。注釈が必要のようだ。パサージュは、英語のPassage(パサージ)、通行、通路などの意味。クラブ側では、パサージュを“寄り道”と読ませたいようだが、筆者はもともとの事業主が日本舗道だから、舗道乃至は通路と読むのがよい、と思っているがどうだろうか。
しかし“寄り道”とはよくも言ったものだ。東京から空路海に浮いた長崎空港に降り立つと、すぐ傍の波止場に格好いい快速艇が待っている。パサージュ琴海GCのすぐ下まで、白波を切って運んでくれる快速クリッパーだ。ゴルフ好きなら、いやでも“寄り道”したくなるのだ。陸路長崎経由では遠回りである。
快速艇を下ると、クラブバスが待っている。すぐ上はゴルフ場のホテル。その先は5分でゴルフコースの玄関である。
もう一つ、「琴海」とは何か、事前説明が必要である。
ゴルフ場は、大村湾に突き出した半島の上に展開している。琴海とは、その大村湾の別名である。日本一大きい琵琶湖に次いで大きいから琴の海である。地元では、海ではなく湖のつもりなのだ。それほど静かな海面である。ゴルフ場のパンフでは、「静かなる波の囁きが、琴のしらべを感じさせる」と書いている。複雑な入江と半島と多くの浮島に囲まれて、海というより静謐で美しい景色の湖面で見える。だから琴海である。
そして日本中のゴルフ好きが、パサージュ琴海GCに寄り道したくなるのは、絶景の海に浮く、3番(184ヤード)パー3で、海越えに打つ豪快な1打、冒険に挑みたいからだ。気持は、1番ティに立った時から、3番へ3番へと前のめりになっている。
海越えに打つ冒険と絶景
3番ホール、184ヤード、パー3。
ティから見ると、グリーンは海越えで10メートル下である。いや20メートル近いかも。美しい海に浮く島を全部ひとり占めにしたグリーンである。いや厳密にいえば、島ではなく右から張り出した半島である。しかしティから俯瞰すると全体が島という印象だ。筆者は今でも島だと思い込んでいる。
グリーンの大きさは800平方メートル(藤井久隆支配人)。半島全体は、その約4倍だそうだ。ティグラウンドに立つと、足元のすぐ下が海。海面は、その名無し半島の前面を右から左へぐるりとめぐって、左の突端で尾戸半島との間を狭い瀬戸にしながら、島の向う側の広い海面につながっていて大きい自然で見せている。グリーンを乗せた名無しの半島の付け根は右側だが、それは細々とした道でつながっているだけで、それもティから見ると、右の林の向うにかくれてしまっていて、3番パー3はどう見ても海越えの島グリーンである。池の中に置いたP・ダイの島グリーンには見られない大きな自然、景観がここの島グリーンの周囲をめぐっているのだ。
グリーンの形は右から左へ延びており、ピンが左に立つほど海越えは遠くなる。一番遠い海越えが184ヤードである。自信のない人は、右へ狙って打てば海越えはひと先づ安心で、一番短い箇所で100ヤードもあれば足りる。但しそこまで逃げたら、もう1回ピンへ向っての第2打アプローチが必要となる。セントアンドリュース・ランナップ・ショットのような妙技の持主ならともかく、寄らず入らずで4パットの危険もある。
グリーンは、ティから見て、横長で大きく中央にマウンド状のふくらみがあり、ふくらみを中心に2段グリーンになっているので手強い。このホールに限らず、パサージュ琴海のグリーンは、グリーン上をころがるボールの姿が、見えたりかくれたりするほど変化しているから1パット狙いより1パット圏に寄せる方が賢明か、しかしそれも…
3番・パー3の横顔を見る
3番ホールの魅力は、ティから見た正面海越えの顔だけではない。いろいろな表情を楽しめる。
たとえば3番ティからグリーンへ向う吊り橋の上から見下すと、グリーンの横顔を見ることになる。タテ長グリーンを正面の上から見た構図になり、左右の海面が意外に近く感じられてスリリングなタテ長グリーンは実際よりも細く見えてこちらからのオン・グリーンもおもしろそう?
以前にラウンドした時、吊り橋を渡ってすぐの道路の左にティグラウンドがあった。懸賞ホールインワン競争のための特設ティか、あるいはレディスティか。ここからだとボールは一度も海の上を越えないで飛ぶ。ゴロでもグリーンまでころがるかもしれない。
3番ホールを終って、コンベアで4番ティへ上る。コンベアの上から見る鳥瞰図も悪くはない。しかし、他のホールからみた“3番ホールの絶景”の一番は、12番ティからの眺めだろう。入江の広い海面を距てた12番ティから眺める3番ホールはやや遠い。それがいい効果を上げていて、3番ホール全体を海に浮かんだ森と小山の島の山ふところに抱かれた1ホールだけのゴルフ場のように見せていて印象に残る。
12番ホール(403ヤード・パー4)自体も、バックティから180ヤードの海(入江)越えの第1打で、かなりスペクタクルである。しかし12番ティからみてより大きな絶景は、12番グリーン方向ではなく、海越え3番ホールの方向である。
日本プロ開催
パサージュ琴海は、平成22年5月日本プロゴルフ選手権を開催した。
18ホール・7107ヤード・パー72を、18ホール・7060ヤード・パー70で72ホール競技を行った。日本プロゴルフ協会の最高のイベントである。
結果は、谷口 徹プロが10アンダー270ストロークで優勝。各日のベストスコアは、第1日 久保谷健一 65。第2日 平塚哲二 64。第3日 谷口 徹 65。 第4日 上平栄道、谷原秀人 67。
データから見えてくるのは、パサージュ琴海コースは、飛距離を誇る若手プロよりも、ゴルフの妙技と多様さを知ったベテラン向きのコースといえそうだ。
因みに、3番ホールは、184ヤード・パー3のフル・バック(CT)を使用していた。
パサージュ琴海アイランドゴルフクラブ
所在地 長崎県長崎市琴海戸根原町171
コース 18ホール・7107ヤード・パー72
コースレート 73.6
開場日 平成4年4月25日
設計者 藤井 義将
コースレコード なし