第57回 北海道クラシック・ゴルフクラブ

 

 

ニクラス「私の自信作」と語る

北海道クラシック・ゴルフクラブ 本棟と食堂が別棟になったクラブハウス
北海道クラシック・ゴルフクラブ 本棟と食堂が別棟になったクラブハウス

 北海道クラシックのコースについては、完成する前から、筆者には、憧れに似た期待があった。設計者の帝王ジャック・ニクラスが、このコースについて、
 「ここは、米国の名門ゴルフリゾート・パインハーストを連想させる」と語り、
 「今、日本の北海道で、私の自信作を造っている」
 と、珍しく多辯だった。平成3年6月8日開場後には、「北海道クラシックは、私が日本で設計したコースのうちの最上の作品だ」という意味を語ったコメントを紙上で読んだりした。こうして筆者の中のクラシック憧憬はより深くなった。
 筆者を含めた内地のゴルファーには、北海道へ飛ぶ飛行機の中で、一つの期待がある。それは、北海道という大きな大地につくられた大きなゴルフコースへの憧れだ。内地のコースは、箱庭コース、ガーデンスタイルだ。北海道なら違うと期待したが、意外にも既設のコースは、輪厚も島松もクラークも札樽、室蘭も、内地型のガーデンタイプを出ていなかった。設計者も母体企業も施工業者も内地派遣だから、そうなるか、と落胆。その分“本物の北海道コース”への憧れは募っていった。
 そこに帝王ニクラス登場である。ニクラスなら本物の北海道の自然の大きさ、雄渾さをコース設計の上に提案してくれるだろう、そういう期待が、北海道クラシックの上に描かれた時期があった。

チャレンジを要求する戦略設計

北海道クラシック・ゴルフクラブ フェアウェイに長い水景を伴走させた16番(パー5)ホール

北海道クラシック・ゴルフクラブ フェアウェイに長い水景を伴走させた16番(パー5)ホール

 ニクラスに、「米国の名門リゾート・パインハーストを連想させる」といわせた、北海道クラシックの用地はどんな環境だったか。
 このコースは、全域が柏(かしわ)の原生林で、数限りない葉裏が風にそよいでいて眩しいほどだ。柏の木は、高くなりすぎないのが特徴、3メートル弱で刈り揃えたような林立が続く。20年前のコース周辺には、森林のほか小さい湖沼と牧場が拡がっていて、隣は、名馬テンポイントを生んだ吉田牧場だった。
 こうした土地柄から、このコースには、ゴルフ場の雰囲気を超えてスポーツフィールドの爽やかさが溢れていた。それが、ニクラスに、名門ゴルフリゾート・パインハーストを連想させたのである。
 北海道クラシックの18ホールには、J・ニクラスの設計思想が満載されている。プロゴルフ出ではない、専門職業設計家のR・Tジョーンズ・ジュニアが、
 「彼のコースは、自分のゲームに基づいて設計されています。ロング・ボールを打ち、高く上がるショットで小さなグリーンに乗せなければなりません。それが彼のプレーのやり方です」と語っているような、そんなニクラスの設計思想が満載されているのだ。
 特に、6番(401Y・P4)、10番(525Y・P5)、17番(163Y・P3)、18番(448Y・P4)の水際設計は、きびしくも非凡である。
 中でも忘れられない難ホールは、10番ホールである。否、名ホールである。
 フェアウェイは2本である。左のそれは大池の上に浮かび、右のフェアウェイは、右の岸辺柏の林間に伸びている。左の水上のフェアウェイは、第2打で高さ7、8メートル上のグリーンを池越えで狙うドラスティックな攻略ルートだ。右の陸のフェアウェイは、3オン狙いの設計だが、グリーンまでに深いクロスバンカー、装飾バンカー、そしてフェアウェイをしぼる立木を並べて、飛球の空間は狭い。やっと辿りついたグリーンは、大池の上に高く突き出した半島の上に小さい。ストレスのたまる造りだ。
 どちらのルートを選ぶか、その判断はティグラウンド上で求められている。
 6番、18番は、似たような戦略設計だ。パー4の6番は第2打、パー5の18番は第3打で、残る170~180メートルをダウンヒルから打つ池越えとして設計している。池の手前でのレイアップを嫌いダウンヒルにしたのだ。ニクラスはチャレンジを求めているのである。これがニクラスの本領。両コースがシングルプレーヤーに喜ばれる理由もそこにある。
 17番(パー3)は、大池の上、10番グリーンの対岸にあり、水面から10メートルの半島いや岬の上にグリーンを置いている。グリーンは陸側から岬の突端へ横長で奥へ浅い。ピンが右にある時と左のフラッグと、その戦略的迫力は比較にならない。精緻な名ホールだ。

日本アマ決勝の後からプレー

 筆者は、北海道クラシックで、滅多にない幸運に恵まれた経験がある。
 平成13年7月14日、北海道クラシックで行われていた日本アマチュア選手権決勝日 宮里優作×金旲渉(韓国)の優勝争いの、すぐ後からプレーすることができた。
 コースセッッティングは、選手権そのままだ。当然、各ホールともピン位置はきびしかった。10番ホールでは、池の上にせり出した高いグリーンの池側いっぱいにフラッグが翻っていて、アマ・チャンピオンの戦略水準の高さ、恐さに、膽を冷やしたりしたものだ。
 結局、最終ラウンド(36ホール)の途中まで3ダウンと後れをとっていた宮里は、最後のアウトでイーブンに戻し、28ホール目では、目の醒めるバックスピンで30センチに止め、3&2で優勝。日本ジュニア、日本学生を含め、アマチュア3冠を達成した。
 
所在地      北海道勇払郡安平町早来富岡406
コース規模   18ホール・7059ヤード・パー72
           コースレート   73.8
設  計      ジャック・ニクラス
開場日      平成3年6月8日