第82回 入間カントリー倶楽部

入間カントリー倶楽部 クラブハウス

入間カントリー倶楽部 クラブハウス

 

 

 四月“桜満開”の誘い
 
 一月三十一日、最高気温、7度。
 二月一日、最高気温、14度
 二月二日、最高気温18度
 「また大雪だというが、今日は、コートの腕に止った雪を口で吹いたら、軽く飛んで行ったよ」そんな声を聞いた(一月三十一日朝のできごと)   春はすぐそこだ。
 
 春になると「桜の満開は、今年は4月上旬、是非1ラウンド、プレー傍ら桜見物に来なさい」と、毎年必ず誘ってくれるゴルフ場が2コースある。横浜の磯子カントリークラブと埼玉県の入間カントリー倶楽部である。
 二つのコースには、桜の美しさだけではなく多くの共通点がある。
 筆者は、吉田治夫社長に訊ねたことがある。-入間CCの他にない自慢をいくつか上げれば何ですか
 吉田社長はすかさず、「18ホールがそれぞれに個性的な表情を持っていて、一つとして同じ攻め方では攻略できません」
 という返事だった。
 磯子CCもそうだ。18ホールがそれぞれに個性的である。ということは、2コースとも、そこにある自然そのものに沿ってコースを造っているので、一歩退いて見たとき、全山に桜が満開しているかのように見えるのである。
 詳しく見れば、入間CCでは、桜が一番見事な5番ホールでは、右のカート道路沿いが桜のトンネルである。いや、入り口の進入路1.1キロのうち、1キロが、桜のトンネル並木である。つまりは個々のホール毎に造型されているのに、全山が一つの桜の山景で見えるのは、コース設計が、そこにある自然そのものを大切に創られているからである。
 桜は、吉野桜一色、そこにスルーザ・グリーンからやや離れた山の中に、自生した山ざくらが2、3本点在しているから、益々そこは自然ながらに見えるのである。磯子CCも事情は同じである。
 吉野桜は、満開に咲くと絢爛の美、対して自生の山ざくらは、細身だが健康な凛とした素ッピンの美人である。
 オーガスター・ナショナルGCやサイプレスポイントGCを設計したアリスター・マッケンジーは、書いている
 「今あるコースの中で最も素晴らしいと感じるのは、自然が創ったコースです。」(迫田耕訳)
吉田社長の内緒の話だと、入間CCの自然が原型に近く残ったのは、「建設予算が不足して、手抜きしたからだ」という人がいるらしいが、その言葉は、ゴルフコースを正しく読み取れない人の敗け惜しみであろう。
 

入間カントリー倶楽部 1番ホール(1番ティからグリーンを望む)

入間カントリー倶楽部 1番ホール(1番ティからグリーンを望む)

 「1番はオーガスタ・ナショナルに似た地形」
  
 車で関越自動車道練馬の起点から約30キロ、鶴ヶ島ICで降り、インターからコースまで11キロ。この間練馬の起点から40分。電車は東武東上線池袋~坂戸駅間45分。クラブバスは坂戸駅から20分。秩父山系が関東平野になだれ込む末端の丘陵地23万坪に展開する18ホール・6620ヤード・パー72のゴルフ場である。近くに、300年の歴史を持つ越生梅林がある。
 開場は、昭和52年9月18日。コース設計日本緑化土木。同社は、戦前からのゴルフ場建設の先駆となった安達建設にいた平山金輝が創業、昭和30~50年代のゴルフ場設計ブームの中で関東地区トップを争った専門業者。戦後米軍の占領下にあった小金井CCの管理、再建に関係、以後千葉CC、武蔵CC、大利根CCなどの名門コースの建設に携わり、経験は随一。その中から紫すみれ、八王子CCなど6コースを設計した小林英年、その甥で鳩山GC、キングフィールズGCなど36コース設計の小林光昭(3代目の日本ゴルフ場設計協会会長)の英才を出している。入間CC設計には個人名はないが、それら英才たちを生んだ同社の経験が注ぎ込まれていた筈である。
 1番(529ヤード・パー5)は、18ホールを象徴する地形である。高いティグラウンドから遠くフラッグが見える。グリーンも高いということだ。ところがその間に大きな波が二つ、特に第一の波は大きく、第一打はその前の初めの波間に落ちる。問題は第二打の戦術である。目の前に聳えるように高い波頭を越すべく、思い切り快打を飛ばすか、或いは、第一の波頭の頂上に止めて第3打でオングリーンを狙うか、そこが戦術だ。第1打、第2打の合計飛距離によって第3打のボールライは、打ち下しか打ち上げか、砲台グリーンまでの飛距離勘が左右される。(1番ホールだけではない。入間CCのアンジュレーションのいくつかは、全体のスコアメイクを左右する場合がある)
〔閑話休題〕吉田社長の隠し話によると、1番ホールを指して、「この地形の凄さ、微妙さは、オーガスタ・ナショナルを思い出させる」と語った人がいたそうだ。
 マスターズ・トーナメント会場のオーガスタ・ナショナルは、TVだけ見ている大部分の日本人には、そんなにアップダウンがあるコースという先入観念はない。しかし実際は、10番の打ち下ろし第1打が65メートルのダウンヒル、18番フィニッシュは、28メートルの打ち上げという凄い地形である。
 恐らく先の言葉の人は、実際にオーガスタ・ナショナルをプレーした経験があったのだ。入間CCの地形に音を上げていては、このコースの長所を見逃すことになる。
 6番(415ヤード・パー4)は、ハンディキャップ1、一番難しいホールである。フェアウェイは大きなアンジュレーションを超えて、右へドッグレッグしている。第1打がその隆起の高見まで届けば後は平坦、グリーンも狙える。250Yは必要か。届かないと見て右方向を直行しようとすると疎林に打ち込んで苦労する(筆者の経験…)その右に美しい桜の林立が並んでいる。
 難ホール第1位は6番ではなく15番ホールでは、という意見は多い。15番(576ヤード・パー5)第一打、第二打と打ち上げ、フェアウェイは左傾斜続き。白マークから打って、第1打250ヤード、残りグリーンまで280ヤードと打ち上げが続くが、第2打を190ヤードに押さえて、前方高見の地点に止め、残り90ヤードのグリーンを狙う。第2打を焦って飛ばし過ぎると高見を超えて深い谷隘に落ちて、グリーン面が見えず、第3打のボール・ライも、左下り、左上がりとトラブルになる。地形と自分のプレー能力をどう読解して、第3打を打つか、その勝負である。
 実はその勝負は14番(394ヤード・パー4)から始まるようだ。このホール第1打は前方中央狙いで池越え150ヤードを飛ばすと、コースNo1の桜の大樹の右へ。第2打は右ドッグレッグ。止った場所は軽い落ち込み。第2打を真っ直ぐ飛ばすと、砲台上のグリーン狙いが失敗しやすい。左目に落として3オン・1パットが賢いか。ここも設計者との地形読解力の勝負。
 16番(357ヤード・パー4)は打下し、第2打130ヤードの打ち上げとやさしいホールになってしまったが、昔は第1打落下点に池、そこから右へクリークがスルーザ・グリーンに絡みついていたが、それらは埋められて第2打は130ヤード打ち上げと易しくなった。しかし筆者は14番、15番の難易度の高さを考慮して、14、15、16番を、オーガスタ・ナショナルの11、12、13番を“アーメン・コーナー”と呼ぶ習慣に習って、入間CCのアーメンコーナーと呼びたいが、如何?…

入間CCで上達したければ
 自分専用の“ヤーデジブック”を持とう

 エピソードがある。ある日、廻れば必ず18ホールで30ストローク台、40台は滅多にないと、上昇期真只中の人が、入間CCに現れ、1ラウンドした。結果は45。
 その人の帰りの捨て台詞は
 「このコースには攻めのルートがない。地形も悪い設計も悪い」
 と怒って帰った。
 どうやらこの人はフラットで広く、どこからでもピンが見えていて、真っ直ぐな7000ヤード級のコースで、ボールの飛距離とニア・ピンだけを競い合う競技ゴルフに熱心なゴルファーだったようだ。
 もう一つのゴルフがあるのだ。ブラインドホールがいくつあろうと、自分の読解力(想像力)で地形を読み設計者がそこで読み取った自然ながらの戦略性を読み取りながら攻略してゆくゴルフの楽しみ方である。地形をめぐる設計者とプレーヤーの読解力(想像力)の競い合いである。その楽しみ方は、キャリアのあるシニア層または熟練プレーヤーがふさわしいだろう。彼らは、自分専用のヤーデージブックを持ち、今日のボール落下点と前回のそれを比較し、記録する。全ショット、パットを記録する。風の方向も芝の生育の仕方も記録する。そうすることで、設計の意図も見えてくるし、自らの攻略ルートも見えてくる。それが飛ばしゴルフから上簇した熟達ゴルファーである。
 入間CCは、そうしたゴルファーにふさわしいコースである。現在もメンバーの70%が60才以上といわれる。80才以上はプラチナ、70才以上ゴールド、それぞれのティマークから頑張っている。レディスも全長5000ヤードの独自のティグラウンドから楽しむ。老熟ゴルファー中心の新しいゴルフライフが築かれつつあるのかどうか、注目される。
 
 
所在地     埼玉県入間郡越生町大字如意1159-1
コース規模   18H・6620Y・P72
          コースレート・71.6  ベント2グリーン
設計者     日本緑化土木㈱
開場年月日  昭和52年9月18日
経営       ㈱入間カントリー倶楽部。母体は化学メーカーの㈱クラレ(資本金890億円)