第48回 宮崎カントリー倶楽部・青島コース 《LPGAチャンピオンシップ開催コース》

 

 

 今回は、宮崎カントリークラブ・青島コースを紹介します。毎年11月末、日本女子プロ協会の“チャンピオン・オブ・チャンピオン”すなわち年度の女王を決定する「LPGAツアーチャンピオンシップ」の会場となるコースです。宮崎空港隣接地の防潮林に昭和35年に造られ、地元では、“宮崎の小金井CC”といわれる名門コースです。

設計は、“精密機械”といわれた三好徳行
倶楽部チャンピオン霞ヶ関CC7回、我孫子GC5回 日本アマ3連覇

宮崎カントリー倶楽部・青島コース

宮崎カントリー倶楽部・青島コース

 このコースを語るにはまず、その設計者から語る必要がある。
 設計者は三好徳行は小山ゴルフクラブの項で紹介した久保田瑞穂(昭和14年日本オープン・ベストアマ、昭和39、41日本アマ優勝)と並び称されたアマチュアの名選手。因みに三好は、昭和41年のベストアマと日本アマ優勝と、久保田と同じ両タイトルを掌中にしている。
 三好徳行。明治44年8月5日、福岡県生れ。父は炭鉱経営者。九州帝大法文学部卒業。在学中、福岡ゴルフ倶楽部大保コースメンバーとなり、九州一の名手麻生義太賀に影響され、忽ち上達、昭和13年関西アマチュア優勝、上京して霞ヶ関CC倶楽部チャンピオンを戦前に昭和15、16、17、18年の計4回、戦後も30、31、32年の3回、合計7回優勝。我孫子GCでも昭和25~29年の連続5回倶楽部チャンピオンに勝っている。
 ナショナル級の大競技でも、関東アマチュアに昭和26、27、30年の3回、日本アマチュアには昭和28、29、30年に3連勝、“三好徳行時代”を築いた。なお大学出て満州重工業勤務中、満州国アマチュアゴルフでも優勝している。
 170センチ前後の小柄だった三好のゴルフは、飛距離は普通、しかしテクニックは「精密機械」の異名をとる程正確無比だった。第1打はいつも置いて行かれる。ということはいつも第2打オーナーである。そこで三好がピタリとピンに寄せるので、飛ばし屋たちは第2打を打ち竦んでしまう。マッチプレーでは、こういう展開が三好に大いに味方したのである。
 正確無比の精密機械。三好設計のコースを攻めるには、正確なプレーが第一、設計者が用意した戦略を正確に読み解くことができるかどうかだ。
 昭和32年のブリヂストンから平成4年のサミットGCまで計27コース。宮崎・青島の他、富士桜、鳩山CCなどの代表作がある。

後れてやってきた宮崎のゴルフ文化

 九州地方にゴルフ場が生れるのは、長崎県(大正2年雲仙ゴルフ場)、福岡県(大正15年福岡GC・大保)、大分県(昭和5年別府GC)、熊本県(昭和6年熊本GC)、佐賀県(昭和12年唐津GC)の順である。南国の2県は、鹿児島県(昭和32年霧島GC)、宮崎県(昭和36年宮崎GC・青島)と戦後まで後れを取っている。
 最も遅い宮崎県では、宮崎県の花ヶ島競馬場に、曲りなりにも9ホールのコースが生れたのが昭和30年のことだった。
 昭和32年カナダ杯日本優勝が、日本国中にゴルフ場新設の火を点けた。「宮崎にも本格コースを…」の声は、競馬場コースの会員たちの間から起った。
 昭和35年3月25日宮崎ゴルフ(株)設立。社長は岩切章太郎(宮崎交通社長)資本金4500万円。コース用地は、宮崎空港と海浜に挟まれた松の防潮林だった。茨城の大洗GCに似たシーサイドの穏やかで平坦な松林だった。設計は、日本アマ3連覇で人気上昇の三好徳行。白砂青松の松林にはぞっこんだったが、コース全体に40センチの客土をするため、またプレーのポイント、10、11、15、17番などに自然に育ったような大きな砂丘をつくり、高く掲げられたグリーンを置いた。その上に三好設計特有の精密な戦略が匿されたのである。コースは、アウト2、3番ホールが空港に近く、インコースは海岸線に沿っている。
 創業者の岩切社長が、大洗GCをラウンドした経験で、松林の中のラウンドは、各ホールが見分けにくいとし、それぞれに南国の花木を植えて目印とした。楠、爽竹桃、サボテン、ユーカリそして18番ホールはフェニックスである。

代表的な4ホール 精密に仕掛けられた戦略の妙

宮崎カントリー倶楽部・青島コース

宮崎カントリー倶楽部・青島コース

 それでは、精密機械といわれた稀代のアマチュア名手が設計したゴルフの戦略を、プレーヤーはどう読み解けばいいのだろうか。
 筆者は、1991年(平成2年)、このコースについて、「“パーセーブゴルフ”というテーマでつくられた名作」という文章を書いている。バーディチャンスだと早読みして攻めたら、パーを逃すどころか、ボギー、ダブルボギーの大怪我をするという意味を込めて書いた。
 たとえば11番(485ヤード・パー5) 今のプレーヤーなら2オン可能な距離だ。アベレージでもうまくつなげば3オン狙いになる。ピンフラッグは右だ。設計者は左側に花道を用意しているのだが、2オン狙いでも、3オン狙いでも(3オンならなお更)右バンカー越えにピンをダイレクトに狙いたくなる。確信して打った!!
 しかし打ち終ってから「失敗」を確認することになる。バンカー越えに攻めたグリーンは奥へ下り斜面になっていて、ボールはグリーン外へころげ落ちる運命にある。
 逆に、左に設けられた正規の花道(或いは花道寄り)から攻めると、グリーンのスロープは右流れになっていて、パーセーブは勿論バーディチャンスも生れるのだ。
 17番(317ヤード・パー4)は、LPGAツアーチャンピオンシップ最終日に、優勝を賭けた1ストロークの明暗が分れるホールとして、視聴者にお馴染みである。短いパー4だ。残るは2ホール、ここでバーディを取らないと挽回できないと焦る。ピンまで100ヤード、第2打はピッチングで右バンカー越えだ。左に花道は見えるが、ここは勝負だ、と右ねらいになる。バンカー越えがあまりにも短かすぎるからだ。
 しかしグリーンは極端な右流れ且つ奥へ向う下りスロープになっていて、ボールはコロコロと転がり落ちる。結果はボギーか。
 15番(413ヤード・パー4)も花道はグリーンの左端近くに用意されている。グリーンは奥行が狭く横長、全体に左から右へ傾き、右の方ほど微妙に奥流れになっている。従ってピンが右側に立っているときは、ダイレクトなピン狙いは要警戒。左の玄関口から礼儀正しく入った方がパーセーブには安全である。トラップ無視の性急なピン狙いは大失敗に直結する。
 10番(341ヤード・パー4)は、小高く盛り上げられたグリーンに、四方から大きなバンカーが匍い上がろうとしている構図でかなりオーバーハングなバンカーだ。しかし第1打打下しの短いパー4だ。第2打はピッチングか9番アイアンになる。ピンがどこでもバンカー越えで狙えそうだが、ここでは、ピン位置にかかわらず、第2打はグリーン中央狙いにしたい。なぜか。設計者がそれを求めているからだ。
 以上は、宮崎CC青島コースについての攻め方ならぬ読み取り方を紹介した。
 ゴルフコースも小説と同じ作品である。小説の読者には精読者と卆読者、雑読者がいる。精読者とは、文学や小説の極意を知りつくして眼光紙背に徹するような読み方をする人だ。ゴルフコースも小説と同じく人の作った作品である。正しい深い知識をもって臨まないとそのコースの良さを読み取れない、そんな作品がある。精密機械といわれた三好徳行が設計した宮崎CC青島コースは、そういう「作品」である。

名 称     宮崎カントリー倶楽部青島コース
所在地     宮崎県宮崎市大字田吉字松崎4855-90
コース規模  18ホール・6585ヤード・パー72
          コースレート71.8
設計者     三好 徳行
開場日     昭和36年6月27日