第63回 キングフィールズゴルフクラブ

 

 

月例競技はいつも満員
 アスリートの多いメンバー構成

キングフィールズゴルフクラブ 18番グリーンからクラブハウス

キングフィールズゴルフクラブ 18番グリーンからクラブハウス

 最近、キングフィールズゴルフクラブの人気上昇が話題になっている。
 同コースは、平成18年から平成23年までの6年間、日本プロゴルフ界のツアー機構(JGTO)プロ協会(PGA)女子プロ協会(LPGA)の3ツアー対抗競技(日立後援)の会場となった。そして平成23年9月8日~11日には、日本女子プロゴルフ選手権大会(コニカミノルタ杯)を開催した。ともに試合はテレビで全国中継された。当然キングフィールズの名は全国区になる。来場者が目に見えて増え、会員権相場値も上昇する。コースの高い戦略性は、3ツアー対抗で証明された。さらに日本女子プロ選手権に際しては、LPGAの小林浩美会長は、「改造は不要、今のまま利用させて欲しい」という申し出だったと鈴木安永社長に聞いた。
 それでははて?何が、キングフィールズ人気を刺激しているのだろうか。
 会員権相場表を見てみよう。ゴルフダイジェスト誌4月24日号誌上での相場値は、430万円。千葉県下では、鷹之台1700万円、我孫子980万円、袖ヶ浦(共)495万円に続いて第4位である。自他共に認める県下の名門千葉CC345万円の上にある。
 人気の理由を、会員権業者は、会員数が871名と少ない。日本女子プロ、3ツアー対抗の効果と指摘。市場では買いが“売り待ち”状況だ。
 経営トップの鈴木安永社長は、「当クラブにはアスリートゴルファーが多い。月例競技は毎回満員の状況です」と語る。それも一因か。メンバーは東京在住が中心、世田谷の人が多いそうだ。
 
新世紀と共に「新生」へ
 
キングフィールズGCは、平成13年(2001年)、磯子CCグループの㈱アークスが経営継承している。21世紀とともに生れ変わったのである。
 前身は、福島中心に店舗を展開する藤越グループが、昭和60年11月1日に開場した藤越キングツリーフィールズだった。
 5番ティ近くに祠があり、巨木が数本取り囲んでいる。マテバシー(全手葉椎)という椎の木である。それをゴルフ場では、“大王樹”キングツリーと呼ばせ、クラブ名を「藤越キングツリーフィールズ」と呼称したが、間もなく長すぎるとして、キングフィールズに変更したものである。

 18ホールズは、どう造られてきたか。
 与えられた33万坪に、18ホールをどう並べるか、ルーティングを描いたのは、米国の設計家チーム・ベンツ・アンド・ポーレットだった。ついで各ホールの意匠、造型と戦略の詳細設計は、当時“ウォーター・ランドスケープ(水景)設計”で売り出し中の設計家小林光昭。さらに平成13年11月経営が現会社に継承された以後は、龍ヶ崎CC設計、造成、管理で井上誠一の下で働いた経験を持つ設計家大久保昌が、コース改修、改造で働いている。
 小林は、神奈川県のレイクウッドGCで、“水の魔術師”といわれた米国人設計家テッド・ロビンソンの下で働いたので、その手法を学び、いわば“日本の水の魔術師”だった。当然キングフィールズのコースでも、眺めでも攻めてもウォーターホールが、人気を集める。その中心が、大池を挟んで、二つの水景ホールを、卍巴(まんじともえ)型に絡ませて妙の、17番、18番ホールである。
 
17、18番、卍巴型に絡む水景の妙
 

キングフィールズゴルフクラブ 17番ホール左正面フェアウェイドッグレッグして右奥は17番グリーンを望む。右下手前は18番グリーン

キングフィールズゴルフクラブ 17番ホール左正面フェアウェイドッグレッグして右奥は17番グリーンを望む。右下手前は18番グリーン

 17番(547Y・P5)6~7メートル近く高いティグラウンドから、右に大池、杉林を見下し、フェアウェイは250ヤード直線で延びて右へ、殆ど直角にドッグレッグする豪快な打下しパー5。並みのプレーヤーは右のバンカーを用心しながら直線でフェアウェイ中央狙い。第2打で右折して260~270ヤード残るか。
 飛距離自慢の人は第1打で右杉林は楽に越せるし、さらに強打の人は、右池越えも期待できる。成功すれば残り第2打はグリーンまで130ヤード。だが失敗、池ポチャの危険が多い。
 グリーンは約5メートル高の丘の上、しかもグリーン面が見えないので、アマチュアには3オン狙いはやさしくはない。
 18番(419Y・P4)17番グリーンに隣接した高いティから、約260メートル先、右折したフェアウエイに向けて大きく打下ろす。狙いは、前方右へ延びるフェアウェイ左側二つのバンカー。失敗すれば池またはその手前のラフから第2打を狙うことに。飛距離の出ない人は、第1打を真っ直ぐフェアウェイに打ち下し、第2打で右折、3オン狙いが賢い。グリーンは受けているが、右の部分は池側へ速いので要注意。グリーンから遠い第2打は冒険の2オン狙いよりも、慎重に寄せて、さらにもう一度慎重にセントアンドリュース・ランアップショット(以下略してst)の第3打でピンぴたりを狙うか、判断の仕所である。
 ウォーターホールの2ホールを卍巴型に絡ませて戦略ホールの絶頂感を演出してみせたのが、この2ホールの魅力。さらにそのふたつを、7~8メートルの高所からドライブさせているのが心憎い。
 11番(201Y・パー3)見事にデザインされた渚のバンカーと大池を越えて、広いグリーンへ打つ美しいパー3。グリーンは目立ったアップスロープで、ボールは止りやすい。逆に大池を用心して、ピン奥に大きくオーバーしたボールは、戻しのパットが難しい。しかし慎重に読むと、グリーンは右へ開いている。池、バンカー越えにこだわらず、第1打を敢えて右のフェアウェイ(ラフ)に落し、第2打のstショットで寄せてパーセーブという戦略もある。これは筆者の成功体験である。
 (因みに、セントアンドリウス・ランアップショットとは、オールドコース・17番ロードホールで、横切って置かれたグリーンを、第2打でバンカー越えにまともに狙わず、敢えてグリーンの入り口近くへ寄せ、第3打でピンに寄せ、パーセーブする戦略である)
 9番(438Y・パー4)は、池越えではないが、第2打が軽く右ドッグレッグし、さらにグリーンが右斜めに首を振り、前に深いアリソンバンカーを構えているので、右ピンの場合、冒険しての第2打狙いは危険。グリーン入口に落して第3打のstショットが有効になる。
 遡れば、コルト&アリソンが発明した対角線ハザードの戦略性が随所に応用されているのが、このコースの特徴であり魅力である。飛距離も必要、しかし緻密な戦略判断も求められる。アスリートゴルファーが多く集る理由である。

 
 
所在地      千葉県市原市新巻377
コース規模   18ホール・7091ヤード・パー72 
コースレート   72.8
設計者      ベンツ&ポーレット
          (改造設計)大久保 昌
2011  日本女子プロ選手権成績
優勝  三塚優子 282 67 71 75 69  -6