第85回 美浦ゴルフ倶楽部

美浦ゴルフ倶楽部 クラブハウス

美浦ゴルフ倶楽部 クラブハウス

 

 

 R・T・ジョーンズJrファンとしての期待
 
 美浦ゴルフ倶楽部は、米国の設計家R・Tジョーンズジュニア(以下Jr)の作品である。
  それを知って、筆者は、「R・TジョーンズJrは、美浦の土地にどんな自然を発見したのか」という興味をもって、1番ホールのテイグラウンドに立った。
  筆者は、かねてからR・Tジョーンズ設計の兵庫県西脇市のゴールデンバレーCCのファンである。日本人設計者が揃ってお手上げしたという峡谷の中の3本の溪川の狭すぎる流域のゴルフ場造成を、難易度随一(77.4)の名ホールとして設計して見せたのがJrだった。溪川だから、流域は狭い。急傾斜の斜面が両方から川へ向って迫っている。「狭すぎてブル工事もできない」と日本人設計家がすべて尻込みする中で、Jrは、ブルを殆んど使わず、小さな流域の両側に、テイからグリーンまですべてのショットがフックライとなるホールを繋いでみせた。その結果、プレーヤーは、フェイドボールを打ち続けることを強いられるのである。Jrは、過度の人工性を排して、そこにある自然がもつ戦略性を発見して見せたのである。
  Jrは、美浦の山野にどんな自然を発見したか、その興味で、筆者のプレーは始った。以下は、その報告である。
 
 名コースにはすぐれたパー3がある
  
 名コースには、優れたパー3が揃っているといわれている。その意味では、美浦GCも例外ではない。4ホールともすぐれた姿と戦略的興趣をもったショートホールである。
 中でも、筆者が警戒したのは、15番ホールだった。
 15番(226ヤード・パー3)は、左側に大池を抱え、グリーンまで220ヤードをストレート、殆んどフラットに置かれた配置だ。左の池が気になって、グリーンまでの長い距離を飛ばずには、緊張感が要る。1オンに拘ると、気分が逸って左へ池ポチャのミスも。よく見るとグリーン右側にやや広いプレーゾーンが見える。右へ逃げろ、というスペースが用意されているのか。パー3は1オン狙いと決めつけることはない。右へ用心して2オン、パーセーブだ、と慎重策に出たが、右からの第2打の寄せでグリーンが池側に傾いていることを見落としていて、2パットのボギーとなってしまった。
 他のパー3も、いずれも印象的。7番(225ヤード・パー3)は長いが、このコースには珍しい打ち下しで狙いやすい。中央部の瘤が気になるだけだ。12番(132ヤード・パー3)は、深い谷越えで、1000平方メートル級の大グリーンをデーンと置いているが、テイからは、その姿の半分が確認できるだけ。ショート厳禁、オーバー目と思い定めて成功、パーセーブ。
 5番(173ヤード・パー3)は、前後を5個のバンカーで囲まれ、グリーンは右から中心へ傾斜しているから右目にオン。

美浦ゴルフ倶楽部 17番ホール

美浦ゴルフ倶楽部 17番ホール

 17番ホールが終わるまで勝負は決まらない

 美浦GCをラウンドして、このホールを終わるまでは勝敗は決まらないと思わせるのは、17番ホールである。したたかな難ホールだ。
 17番(426ヤード・パー4)、右側に大きな池が迫り出し、その上の要塞のような高いグリーンへ向ってフェアウェイは、右廻りに池を半ば取り巻いている。難易度1のホールである。最高の幸運に恵まれれば、2オンも可能だが、フェアウェイは池側に傾いて見える。まさに「リスクと報酬」の設計である。安全な第1打は、フェアウェイの左サイドを辿っての3オンだろう。
 そう考えて、第1打はフェアウェイの左サイドを狙ったつもりが、ボールはよく飛んだが、大きくスライスして、池ポチャをようやく逃れた危機一髪の斜面に止った。
 距離だけ考えれば、池の左岸をスレスレに越えて2オンも可能だったが、ボールの位置は極端なスライス・ライだ。しかもグリーンは10ヤード上だ。用心に如くはないと考え、慎重にフェアウェイ左側へ運ぶ。作戦が過ぎたか、ボールはフェアウェイを越えて浅いラフに止る。ピンフラッグまで約120ヤード、ピン傍の3オンは可能と考えて、慎重に3回素振り、ピッチングで軽く打った。ボールはやや飛びすぎてグリーンの右端へ。あと約9ヤードの下り斜面のパッティングが残って、パーセーブできず、ボギー。
 18番(558ヤード・パー5)は、豪快なテイショットが楽しめる打下しのロングホールだ。グリーンも低く置かれている。右手前のバンカーを避けて、1打、2打とも左目へ。2オンも十分可能とコースガイドの解説にある。こちらは難易度18、最難ホールと難度18が続く展開は、設計者のサービスかそれとも皮肉だろうか、と思ったりする。コースガイドに“ロングヒッターは2オンも十分可能”と解説しているホールだ。筆者は3オン狙いでバンカーにも掴まらず、狙い通りの3オン・2パットのパーセーブで最終ホールはバンザイだったが、18ホール合計は「92」、ゴルフ歴50年の熟練ゴルファーが、ボギープレーもできなかった。初ラウンドでは、R・TジョーンズJrが見届けた“そこにある自然”を、読み取れなかったということか。今回のスコアカードをヤーデージブック代りにもっと何回もプレーに来いということだろうか。いやいや筆者も、「正体見たり」とまではいえないが、その手懸かりは掴んだつもりである。
 美浦GCを1ラウンドしての感想の1つは、ドッグレッグホールが多いこと、それに関連してバンカーも少なくはない、と思った。
 ドッグレッグが多いのは、父親のR・TジョーンズSrゆずり、ジョーンズ家秘伝だそうだが、推察するに、そこにある自然を損わない、という信條から発したものか。
 美浦GCでも、1番、2番、3番と続いてドッグレッグしている。真っ直ぐ伸ばしたいがそこに丘陵がせり出していた。それでもブル工事で丘陵を損うことは可能だが、その方法をとらず、右か左へドッグレッグの途を選んだのだろう。それが自然を残す方途だからだ。
 ドッグレッグホールが多くても、テイショットから見て、キックポイント(犬足の曲り角)がはっきり見通せるので、そこにバンカーなり高い独立樹があれば、目標を見失って手古摺ることはない。バンカーをすべて穽(わな)と考えるのは考えすぎ。シグナルとして置かれている例が多いのだ。
 例えば、右ドッグレッグホールでは、第1打は左フェアウェイバンカー右側狙い、左ドッグレッグでは、右バンカーの左サイド、そこからの第2打は、花道へ真っ直ぐに狙える筈である。
 右、左ともバンカーがない場合は、フェアウェイセンター狙いである。
 
 霞ヶ浦の湖面を望む13番ホール
 
 戦略性とは別の感動で印象に残ったのは、13番(560ヤード・パー5)である。高く掲げられた珍しくも小さなグリーン。第3打で左へ開いた花道を狙うと、左側は、大きな窓を明けたようにひらけていて、広々とした水田を越えて霞ヶ浦の湖面が望まれて、構えた姿勢をもう一度解いて、見る。インドネシアかと見紛うようなゆったりと大きな田園風景が望まれた。

コース所在地     茨城県稲敷郡美浦村大字土浦字蔵後2568-19
コース規模   18ホール・7010ヤード・パー72
          コースレート72.6
設計者    R・T・ジョーンズ・ジュニア
開場年月日  平成5年10月7日
経営       PGMプロパーティーズ㈱